スキップしてメイン コンテンツに移動

投稿

ジャン・プルーヴェ展(東京都現代美術館) Jean Prouve (Museum of Contemporary Art Tokyo)

寡聞にもジャン・プルーヴェのことはこの展覧会まで知らなかった。 プルーヴェは、1901年にアール・ヌーヴォーが盛んなナントで、ナンシー派の画家である父と音楽家の母の間に生まれ、1984年に亡くなるまでに家具や建築の分野で大きな業績を残した。 この美術館では、企画展は通常は1フロアのみで行われるが、今回は1階が主にイスなどの家具、地下1階は主に建築を紹介するという大規模な企画展だった。 家具のデザインは、どれもシンプルなものが多いが、それでいてそれまでにはなかったような独自性も感じられた。 建築の分野では、スチールなどの新しい素材を建築に取り入れたり、移動のために解体してもすぐに構築できるように、柔軟な構造の建築が印象的だった。 プルーヴェは、第2次世界大戦中ではレジスタンス運動に参加したり、戦後はナンシー市長を勤めたりと、実に多方面に活躍した人物であったようだ。 ジャン・プルーヴェという人物について初めてこの展覧会でよく知ることができて、その名前は深く記憶に刻まれることになった。 I didn't even know about Jean Prouvé until this exhibition. Prouvé was born in 1901 in Nantes, where Art Nouveau was popular, to a father who was a Nancy school painter and a mother who was a musician. . In this museum, special exhibitions are usually held on only one floor, but this time it was a large-scale exhibition, with furniture such as chairs being mainly displayed on the first floor, and architecture mainly on the first basement floor. Most of the furniture designs are simple, but at the same time, I felt a sense of uniqueness that I ...

フィン・ユールとデンマークの椅子(東京都美術館) Finn Juhl and Danish Chairs (Tokyo Metropolitan Art Museum)

  北欧デザインを代表するデンマークのフィン・ユールと、デンマークの美しい椅子を紹介した展覧会。 第1章では、デンマーク・デザインの父と言われるコーア・クイントとその後継者たちを紹介。 クイントは、コルビュジエに先立って人体のプロポーションと家具の関係について提唱していたという。 続いて、アルネ・ヤコブセン、ハンス J・ウェグナー、ボーエ・モーエンセンらデンマークの巨匠たちの歴史に残る椅子の数々が展示されていた。 第2章では、フィン・ユールの生涯とその作品を紹介。 フィン・ユールは1912年にコペンハーゲンの近郊に生まれ、1930年にデンマーク王立芸術アカデミー建築学科に入学。1945年には自身の建築事務所を設立した。 フィン・ユールのデザインした椅子は、”彫刻のような”と形容される独特の美しいフォルムを持っている。 フィン・ユール邸の写真や、一部のスペースが再現されていたが、仕事場と兼用していたアールト邸と比べると、こちらは完全にプライベート・オンリーという印象だった。 最後の第3章では、フィン・ユールを始めとしたデンマークの家具が展示されて、椅子には自由に座れるようになっていた。 フィン・ユールは生涯にわたり、美しいフォルムに拘っていたという。しかし、大量生産が浸透していく時代にあって、その拘りは時に大きな悩みの種であった。 美しいそのデザインの影には、そうしたフィン・ユールの葛藤が隠されているのかもしれない。 An exhibition introducing Danish Finn Juhl, who represents Scandinavian design, and beautiful Danish chairs. Chapter 1 introduces Kor Quint, who is said to be the father of Danish design, and his successors. Before Le Corbusier, Quint advocated the relationship between human body proportions and furniture. Next, a number of historic chairs by Danish masters such as Arne Jacob...

ボストン美術館展(東京都美術館) Masterworks from the Museum of Fine Arts, Boston (Tokyo Metropolitan Art Museum)

  過去に何度も行われてきたボストン美術館展。今回のテーマは、権力と美術。 人類の歴史において、芸術はその時代の権力者の権威を高めるための手段だった。 そうした観点で、古代エジプトのファラオ、中国の歴代の皇帝、ヨーロッパの王侯貴族、そして日本の天皇や貴族に関する、絵画、彫刻、工芸品など様々なジャンルの展示が行われていた。 訪れた主な理由は、平治物語絵巻と吉備大臣入唐絵巻を目にすることだった。 平治物語絵巻は、以前、日本にある別の巻は目にしたことがあったが、屋敷が火に包まれる劇的なシーンを含んだこの巻は、とても見応えがあった。 多くの武士が折り重なるように描かれていて、それでいて一人一人の仕草や表情まで実に細かく描き分けられていた。 一方の吉備大臣入唐絵巻は、かなりのスペースを使って4巻が展示されていて、端から端までをじっくりと堪能することができた。 物語のように時間が流れていくため、エピソードの切れ目に余白をゆったり使われていて、登場する人物はコミカルな表情で描かれていた。 他にも、12世紀の南宋の時代に作られ、高宗が書を書いたと伝わる詩経書画巻や、范寛の筆と伝わる雪山楼閣図など、中国関連の名品が印象的だった。 また、大名画家として知られる増山雪斎の2幅の孔雀図も目を引かれた。その精巧な筆裁きは、素人画家としての水準を優に超えていた。 しかし、そうした見どころのある作品もあったが、展示品の総数はわずか56点。会場の中の展示品と次の展示品の間のスペースには、何もない空間が目立った。 豊富なコレクションを誇るボストン美術館であるだけに、もう少し展示数を増やして欲しかった。 The Boston Museum of Fine Arts exhibition has been held many times in the past. The theme this time is power and art. Throughout human history, art has always been a means of enhancing the authority of those in power. From this point of view, various genres of exhibitions such as paintings, sculptur...

津田青楓 図案と、時代と、(松濤美術館) Tsuda Seifū - the designs, the time and… (Shoto Museum of Art)

  明治から大正にかけて活躍した、津田青楓についての展覧会。 2020年に練馬区立美術館で行われた展覧会では、津田青楓の生涯にわたる多方面での業績が紹介されたが、今回の展覧会では、図案家としての津田青楓に焦点が与えられていた。 まず、2階の第1会場では、津田青楓の図案集、図案雑誌からの作品が中心だった。 京都生まれということもあるのだろうか。山水草木の伝統的なテーマに、明治らしいモダンな感覚が取り入れられていて、とてもレトロな雰囲気が感じられた。 地下1階の第2会場では、津田青楓に限らず明治時代の図案をとりまいた状況や、他の作家の作品が展示されていた。 琳派の流れからは神坂雪佳、ヨーロッパでの留学からアール・ヌーヴォーなどの流行を取り入れた浅井忠など。 民藝運動とも関係があったバーナード・リーチや富本憲吉などとの意外な接点も紹介されていた。 以前の練馬区立美術館での展覧会では触れられていなかった内容も多く、津田青楓という人物のスケールの大きさを改めて実感した。 An exhibition about Seifu Tsuda, who was active from the Meiji to Taisho eras. An exhibition held at the Nerima Museum of Art in 2020 introduced the multifaceted achievements of Seifu Tsuda throughout his life, but this exhibition focused on him as a designer. First, in the first venue on the second floor, works from Tsuda Seifu's design collections and design magazines were the centerpiece. Could it be that he was born in Kyoto? The traditional theme of landscapes and plants is combined with a modern sensibility typical of the Meiji period, creating a ...

よめないけど、いいね!(根津美術館) Can’t Read It, but I Like It! (Nezu Museum)

  根津美術館の書の名品を展示した展覧会。 何ともユニークな名前の展覧会だが、確かに、”書の名品展”などのありふれた名前では、それほどの集客は見込めないかもしれない。 展示は、写経、古筆、墨蹟、そして近世以降の書蹟という構成で行われた。 どの書蹟も、見応えがあり、興味深く見ることができたが、とりわけ印象に残ったのは、13世紀に書かれた大般若経だった。 浄阿という尼僧が、14年をかけてたった一人でその600巻を書き上げて、春日大社に奉納したという。 そのうちの何巻かが展示されていたが、その字は大きく、太く、墨もたっぷりと使われて書かれていて、書はまさにその人物をよく表す、という言葉が思い出された。 An exhibition of masterpieces of books from the Nezu Museum. It's an exhibition with a unique name, but it's true that ordinary names such as "Book Exhibition" may not attract so many customers. The exhibition consisted of sutras, kohitsu, sumi, and calligraphy from the early modern period. All the books were spectacular and interesting, but the most impressive one was the Large Prajna, written in the 13th century. It is said that a nun named Jyoa wrote 600 volumes by herself over 14 years and dedicated them to Kasuga Taisha Shrine. Some of them were on display, but I remembered that the calligraphy really represented the person by seeing the words that the letters were l...

特別展 アリス(森アーツギャラリーセンター) Alice: Curiouser and Curiouser (Mori Art Gallery center)

  ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』について、様々な側面からその魅力に迫る興味深い展覧会。 ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館で行われた展覧会を、再構成して開催された。 最初のコーナーでは、ルイス・キャロルがこの本を書くに至った経緯、当時のヴィクトリア朝の社会の様子、『不思議の国のアリス』の初版本などが展示されていた。 その後は、『不思議の国のアリス』を元に製作された舞台や有名なディズニーのアニメ映画についての資料、この本にインスパイアされたアーティストの作品、ドレスや衣装などが紹介されていた。 ルイス・キャロルは、本の出版に当たって挿絵がとても重要であると考えて、ジョン・テニエルが選ばれた。 そして、その素晴らしい挿絵は、その後に多くの画家やイラストレーターたちにとって”高い基準”となった。 この『不思議の国のアリス』という作品は、最初からビジュアルな作品として作られて、それがこの展覧会に見られるような、その後の壮大な空想世界を生み出すことになったのだろう。 An interesting exhibition about Lewis Carroll's "Alice in Wonderland" that explores its charm from various aspects. The exhibition was reorganized and held at the Victoria & Albert Museum in London. In the first corner, the story of how Lewis Carroll came to write this book, the state of Victorian society at that time, and the first edition of "Alice in Wonderland" were exhibited. After that, materials about the stage and famous Disney animated films based on "Alice in Wonderland", works of artists inspired by th...

スイス プチ・パレ美術館展(SOMPO美術館) Collections du Musée du Petit Palais de Genève (Sompo Museum of Art)

  プチ・パレ美術館は、事業で成功したオスカー・ゲーズが収集したフランス近代絵画を展示するために、1968年に開館した美術館。 オスカー・ゲーズは収集にあたり、比較的廉価で購入することができ、それほど有名ではないが需要な役割を果たした画家の作品を集めることを目指したという。 ルノワール、ドニ、ブラマンク、ユトリロなどの作品もあったが、多くはあまり知らない画家だったので、とても興味深かった。 それでも、印象派に始まり、新印象派、ナビ派、フォーヴィズム、キュビスム、エコール・ド・パリとフランスの近代絵画の歴史をたどれる内容で、コレクションとしての質の高さを強く感じた。 印象に残ったのは、神智学に関心が深かったというポール=エリー・ランソンと、キュビスムの理論家としても知られるジャン・メッツァンジェの作品だった。 以下の写真は、SOMPO美術館のコレクションから。 The Petit Palais Museum was opened in 1968 to display modern French paintings collected by the successful Oscar Gaze. Oscar Gaze said that he aimed to collect the works of painters who could be purchased at a relatively low price and played a lesser-known but demanding role. I found the works by Renoir, Doni, Bramanck, Utrillo, but many were unfamiliar painters, so it was very interesting. Still, I strongly felt the quality of the collection, starting with Impressionism, tracing the history of Neo-Impressionism, Les Nabis, Fauvism, Cubism, the School of Paris and modern French painting. Impressive were t...