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12月, 2022の投稿を表示しています

桃源郷通行許可証(埼玉県立近代美術館) Passport to Shangri-la (Museum of Modern Art, Saitama)

  展覧会名は桃源郷通行許可証というユニークな名前だが、その名前がわざわざ荒川を越えて訪ねてみようと思わせてくれた。 その名前は、展覧会にも出品している松井智惠の作品名からとられているという。 芸術作品を、桃源郷を訪れるための通行証と見立てて、様々なジャンルのアーティストたちの作品が展示されていた。 橋本関雪、菱田春草、菅木志雄、瑛九、マン・レイなどの作品と、松井智惠や稲垣美侑などの現代のアーティストの作品が対決するような構成だった。 個々の作品はそれぞれ楽しく観ることができたが、残念ながらそれらの作品をシャングリラへのパスポートという風には感じられなかった。 展示されていた作品の中では、独特なタッチの線描画を描いた文谷有佳里の作品がとても印象的だった。 The name of the exhibition is the unique name of Passport to Shangri-la, but the name made me want to go all the way across the Arakawa River to visit. The name is said to be taken from the name of Chie Matsui's work, which has also been exhibited at the exhibition. Artists of various genres were on display, treating the works of art as pass cards for visiting Tougenkyo. It was composed so that the works of Kansetsu Hashimoto, Shunso Hishida, Kishio Suga, Q Ei, Man Ray, etc., and the works of contemporary artists such as Chie Matsui and Miyu Inagaki confronted each other. I enjoyed watching each individual work, but unfortunately I didn't feel that the

雰囲気のかたち(東京都写真美術館) Shape of Atmosphere (Urawa Art Museum)

  雰囲気という言葉が展覧会の名前についているが、明確に形として表すことが難しい、空気感や気配などを表現しようとした様々な作品が展示されていた。 空気を描く方法はないだろうか、という岡倉天心の言葉は、この展覧会の始まりに相応しい。 その問いに答えようとした、横山大観、菱田春草、中谷芙二子、伊庭靖子、小川芋銭、瑛九、河口龍夫、若林奮らの作品が展示されていた。 テーマはさておき、自分の好きな画家やアーティストが数多く名前を連ねているので、とにかく観ていて楽しい展覧会だった。 逆に言えば、私が好きなアーティストとは、そうした作品にすることが難しいものを表現しようとするアーティストだということになるかもしれない。 展示されている作品の中から、1点だけ撮影していいということだったので、やや迷ったが、福田尚代の少女漫画からのコラージュだという作品を選んだ。 福田の作品は、言葉や本にまつわる作品が多いイメージがあったので、そのような具象的なイメージを描いた作品に意外性を感じた。 Although the word "atmosphere" is attached to the name of the exhibition, various works were exhibited that tried to express the feeling of atmosphere and atmosphere, which is difficult to express in a clear form. Tenshin Okakura's words, "Isn't there a way to depict the air?" are a fitting start for this exhibition. The works of Taikan Yokoyama, Shunso Hishida, Fujiko Nakaya, Yasuko Iba, Imosen Ogawa, Q Ei, Tatsuo Kawaguchi, and Isamu Wakabayashi, who tried to answer that question, were on display. Aside from the theme, it was

fire & water (東京都写真美術館) PRIX PICTET Japan Award (Tokyo Photographic Art Museum)

写真とサステナビリティに関する国際写真賞のプリピテクジャパンアワード展。 プラスチックの小さな粒、まるで模型で作ったような雪山の風景、離島の人々の生活、荘厳な自然の造形など、様々なテーマの作品が展示されていた。 サステナビリティへの取り組みは様々な方法で行われている。 映像によるアピールも大きな力を持っているが、写真というメディアも、その印象的なイメージで、私たちが暮らしている地球とその自然環境ががどんな状況になっているのかを考えさせてくれる。 PRIX PICTET Japan Award Exhibition of International Photography Awards on Photography and Sustainability. Works on various themes were on display, such as small grains of plastic, landscapes of snowy mountains that looked like models, the lives of people on remote islands, and majestic forms of nature. Sustainability is being addressed in a number of ways. Video has a great appeal, but the medium of photography, with its impressive images, makes us think about the state of the earth and its natural environment where we live.

野口里佳 不思議な力(東京都写真美術館) Noguchi Rika: Small Miracles (Tokyo Photographic Art Museum)

  野口の作品は、以前、どこかの展覧会で目にしたことがあった。 具体的にどんな写真かは覚えていないが、何気ない写真のようでそれでいてとても印象的な写真だったことを記憶している。 この展覧会で、まとまった数の野口の作品を目にすることができた。 野口は、幼い頃から自分の身の回りの様々な出来事に不思議な力を感じていたようだ。 それは決して、非現実的なオカルトのようなものではなく、自然の中にある法則や力のようなものだ。 野口はそうした”不思議な力”を、写真や映像作品に収めようとしている。 この展覧会を観た後で、自分の身の回りにもそうした不思議な力が隠れているように感じた。 I had seen Noguchi's work at some exhibition before. I don't remember exactly what kind of picture it was, but he remembers that it was a casual picture, yet very impressive. At this exhibition, I was able to see a large number of Noguchi's works. From an early age, Noguchi seems to have felt a mysterious power in the events around him. It is in no way like some unrealistic occult, but like a law or force in nature. Noguchi is trying to capture such “mysterious power” in his photographs and video works. After viewing this exhibition, I felt that such a mysterious power was hidden in my surroundings.

ビーズ つなぐ かざる みせる(松濤美術館) Beads in the World (Shoto Museum of Art)

  大阪の国立民族学博物館のコレクションを中心に、世界中のビーズを一同に集めた展覧会。 子供の頃、ビーズで首飾りや腕輪を使って遊んだことを思い出す。 その時に使っていたのは、小さいなガラスかプラスチックの色鮮やかな市販のビーズだったように記憶している。 しかし、会場に展示されていたのは、貝や魚の骨、植物や鳥の羽など、実に多彩で、これがビーズ?と思ってしまうものばかりだった。 そうした世界中のビーズからは、多様な文化のあり方や、人間の自由な発想の豊かさが感じられた。 これからも人類は、身の回りの様々な素材を使って、多彩なビーズを作っていくことだろう。 決して、同じ素材で同じ様なビーズだけが作られるような世界には、なって欲しくないものだ。 This exhibition brings together beads from all over the world, centering on the collection of the National Museum of Ethnology in Osaka. I remember playing with beads on necklaces and bracelets when I was a kid. I also remembers that what I was using at the time was small glass or plastic colorful commercial beads. However, what was displayed at the venue was a truly diverse array of shells, fish bones, plants, and bird feathers. It was all about what I thought. From these beads around the world, I could feel the diversity of cultures and the richness of human imagination. Human beings will continue to make a variety of beads using various materials around them. I don&#

江戸の書画 うつすしごと(成田山書道美術館) Reproducing Words and Paintings During the Edo Period (Naritasan Museum of Calligraphy)

  書画の世界においては、先人たちの作品をうつすことによって、その精華を後世に伝え、またそこから新たなものを作り出してきた。 江戸時代の時の流れにそって、そうしたうつされてきた書画の作品を展示した展覧会。 藤原定家の独特な書のスタイルは、定家様と呼ばれて、江戸時代に至るまで受け継がれてきた。家康のよる定家の書の模本には、その広がりの大きさがうかがえる。 江戸時代の初期に出版が盛んになると、藤原定家を初め空海や小野道風などの名筆を納めた書物が出版されて、一般庶民にも広まるようになっていった。 江戸時代の中期や後期になるど、中国の書家についての知見も広まり、日本の書の文化はますます華やかになっていった。 この展覧会では、浮世絵や若冲に代表される江戸絵画とは少し違った、江戸時代の文化の流れを知ることができた。 In the world of calligraphy and painting, by transferring the works of our predecessors, we have conveyed their essence to future generations and created new things from them. This exhibition presents calligraphy and painting works that have been transferred in line with the flow of time in the Edo period. Fujiwara no Teika's unique style of calligraphy, called Teika-yo, has been passed down to the Edo period. Ieyasu's copy of Teika's calligraphy gives us a glimpse of its spread. When publishing became popular in the early Edo period, books featuring the famous calligraphy of Fujiwara no Teika, Kukai, and Ono no Michikaze w

美をつむぐ源氏物語(東京都美術館) Beauty Nurtured by The Tale of Genji (Tokyo Metropolitan Art Museum)

  現代のアーティストが、源氏物語をテーマに制作した作品が展示されていた。 書、工芸、絵画などそのジャンルは様々だ。 源氏物語と言えば、平安時代末期の源氏物語絵巻や、江戸時代の初音の調度などが思い浮かぶ。 藤原俊成によって、歌よみには必須の読み物となった源氏物語は、和歌の世界に止まらず様々な芸術や工芸分野に影響を与えてきた。 江戸時代には、源氏物語をアレンジした偽紫田舎源氏という読み物が出版されて、そこから多くの浮世絵も制作された。 これからも、源氏物語は多くの作家やアーティストたちのインスピレーションを刺激していくことだろう。 Works created by contemporary artists on the theme of The Tale of Genji were on display. There are various genres such as calligraphy, crafts, and paintings. When we think of The Tale of Genji, the picture scrolls of The Tale of Genji from the late Heian period and Hatsune furnishings from the Edo period come to mind. The Tale of Genji, which Toshinari Fujiwara made a must-read for reading poetry, has influenced not only the world of waka but also various arts and crafts. In the Edo period, a reading material called Nisemurasaki Inaka Genji, which arranged the Tale of Genji, was published, and many ukiyo-e prints were produced from it. The Tale of Genji will continue to inspire many writers and artists.

マリー・クワント展(Bunkamura ザ・ミュージアム) Mary Quant (Bunkamura the Museum)

  寡聞にもマリー・クワントのことは知らなかったが、写真を見て、その顔は見たことがあったことを思い出した。 てっきりモデルさんだと思っていたが、自らモデルをつとめて自らのファッションを世に広めていたようだ。 1960年代の文化を象徴するミニ・スカートは、マリー・クワントが生み出したものではないが、彼女はその独自のデザインで、あたかもそれが自分のデザインの一部であるかのようにしてしまった。 会場を巡りながら、自分が幼い頃にテレビに出演していたタレントのことを思い出した。彼女が着ていたような服が、会場にたくさん展示されていて、当時の時代の雰囲気が濃厚に感じられた。 フランスには、ポワレ、シャネル、ディオール、ローランサンなど正統派のデザイナーが多いが、イギリスを考えると、このクワントを初め、ウェストウッド、マックイーン、ポール・スミスなどの個性的なデザイナーの名前が思い浮かぶ。 そうしたお国柄の違いなども感じることができた。 I didn't even know Mary Quant, but the picture reminded me that I had seen her face before. She thought she was definitely a model, but she seems to have worked as a model herself and spread her own fashion to the world. Her 1960s cultural icon mini skirt wasn't created by Mary Quant, but she designed it on her own, and she made it as if it were part of her design. As I toured the venue, I remembered a celebrity who had appeared on television when she was a little girl. A lot of the clothes that she wore were displayed at the venue, and I could feel the atmosphere of h

機能と装飾のポリフォニー(東京都庭園美術館) The Polyphony of Function and Decoration (Tokyo Metropolitan Teien Art Museum)

1910年から1930年台のデザイン全般の流れを、様々な分野の作品で紹介した展覧会。 この展覧会は巡回展で、この前に豊田市美術館で行われていて、当初はそちらに行く予定だった。 しかしある事情で行けなくなり、この東京展を首を長くして待っていた。 内容は実に盛りだくさんで、ドイツ工業連盟、ウィーン工房、ポール・ポワレやシャネル、バウハウス、コルビジェなどのUAMなど。 そうしたいわゆる”モダニズム”の影響は日本へも及んでいて、日本の着物やインテリアなどの展示もあり、興味深かった。 中にはこれまで知らなかったデザイナーたちの展示があって、新しい発見も多くあり、期待していた以上に楽しめた。 とりわけ、日本の影響を受けたというフランスのジャン・デュナンの漆の工芸作品は、とても新鮮な印象を受けた。 豊田市美術館で行われた展覧会には行くことができなかったが、結果的にアールデコの建築の中でこの展覧会を見ることができてよかった、と言えるのかもしれない。 An exhibition that introduces the general flow of design from the 1910s to the 1930s with works from various fields. This exhibition is a traveling exhibition, and it was held at the Toyota Municipal Museum of Art the other day, and I was originally planning to go there. However, due to certain circumstances, I was unable to go, so I waited impatiently for this Tokyo exhibition. The contents are really varied, such as the German Industry Federation, Wiener Werkstätte, UAM such as Paul Poiret, Chanel, Bauhaus, and Corbusier. The influence of such so-called "modernis

ヴァロットン 黒と白(三菱一号館美術館) Felix Vallotton, Noir et Blanc (Mitsubishi Ichigokan Museum)

  ヴァロットンと言えば、ミステリアスな雰囲気の油絵で知られるが、スイス出身のヴァロットンがパリでその名が知られるようになったのは、モノクロの木版画によってだった。 そうしたヴァロットンの版画作品を中心に展示した、ユニークな企画の展覧会。 当時の有名人たちの肖像を描いた版画もあったが、多くのヴァロットンの作品は、当時の社会の状況が時にシニカルに、時にユーモアを持って描かれている。 1898年に限定30部で出版された『アンティミテ』という版画集には、密会する男女の姿やその心理状態までが、黒と白のコントラストで描かれていて、ヴァロットンの版画作品の真骨頂が表れているようだった。 他にも、ロートレック、ドニ、ボナールら同時代の画家たちの版画作品も展示されていて、ヴァロットンとの違いを見ることができて、興味深かった。 Vallotton is known for his mysterious oil paintings, but Swiss-born Vallotton made his name in Paris for his black-and-white woodcuts. This is a unique exhibition that mainly exhibits Vallotton's prints. There were prints depicting the portraits of celebrities of the time, but many of Vallotton's works depict the social situation of the time in a sometimes cynical and sometimes humorous way. In 1898, a limited edition of 30 copies was published, titled "Antimite", in which the appearance of a man and woman in a secret meeting and their psychological states are depicted in black and white contrast, showing the true